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2025/12/26 |  社員ブログ

建築コスト変動の現状

豊和開発株式会社の設計監理部で意匠設計業務に取り組んでおりますが、ここ数年の建築コストの急騰には頭を抱えています。
このコスト変動は、単なるインフレによる緩やかな上昇ではなく、複数の要因が複雑に絡み合った複合的な急騰という特徴を持っています。建築コストは主に「工事原価」と「一般管理費」で構成されます。変動の主な要因は、工事原価における資材費と労務費の上昇です。今回は現在の状況に至っている要因や、それによる問題点などをまとめ、これからの先行きについて考えてみたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.変動する時期について

毎年のように年に数回、建築資材の値上げが発生しています。その建築コストの変動は、どんな時に起こるものなんでしょうか。
大きくは長期的なトレンドと短期的な急騰期に分けて捉えることができます。
長期トレンドとしては、2010年代前半、特に東日本大震災の復興需要とアベノミクスによる金融緩和が始まって以降、

建築コストは上昇トレンドに入りました。復興需要、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた開発需要の高まり、

およびそれに伴う建設技能者の不足が背景にありました。この時期は主に労務費がコスト上昇の主導権を握っていました。

短期的な急騰期としては、特に2020年以降、建築コストの上昇は加速度的かつ歴史的な水準に達しました。
2020年以降では、新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生直後、ロックダウンによる製材所の稼働停止、巣ごもり需要による北米での住宅建設ラッシュが重なり、

木材価格が世界的に急騰する「ウッドショック」が発生しました。これにより、日本国内でも木材価格が高騰しました。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、原油、天然ガス、石炭などのエネルギー価格が世界的に高騰。これに伴い、製造過程で大量のエネルギーを消費する鉄鋼、セメント、化学製品などの資材製造コストが大きく上昇しました。

同時期に進行した歴史的な円安(日本と米国の金利差拡大が主因)が、輸入資材とエネルギーのコストをさらに増幅させ、現在の高騰の大きなドライバーとなっています。この時期は資材費が労務費の上昇を上回るペースでコストを押し上げました。
 近年、大きな建築コストの高騰があった時期については、上記のような事象による事が挙げられます。

2.問題点について

建築コストの高騰によって、具体的ンどのような問題が起こるのでしょうか。
・デベロッパー・施主側の問題
採算性の悪化と事業中断リスク:プロジェクト計画時と着工時でコストが大幅に変動するため、デベロッパーや投資家は当初の収益予測を下方修正せざるを得ず、最悪の場合、プロジェクト自体の中止や延期を余儀なくされます。
品質・仕様の低下:コスト上昇分を吸収するため、設計変更や仕様のグレードダウンを強いられるケースが増加し、最終的な建築物の品質や性能が低下する懸念があります。
・ 建設会社側の問題
契約リスクと利益圧迫:請負契約を締結した後に資材価格が急騰した場合、その差額は建設会社が負担することになり、利益が圧迫されます。小規模な建設会社や下請け企業では、経営破綻のリスクに直結します。
資材調達の不安定化:主要資材や設備機器の納期が読めないため、工事全体のスケジュール管理が困難になり、工期遅延による賠償リスクや間接費増加のリスクを抱えることになります。
技術者・技能者の流出:コスト高騰によって受注が減少したり、価格競争が激化したりすると、業界全体の賃金水準の伸びが鈍化し、若い技術者や技能者の他産業への流出を加速させる可能性があります。
・ 社会全体の問題
公共事業の入札不調: 積算基準を超えるコスト高騰により、入札に参加する企業が現れず、公共事業の入札が不調・不落となるケースが頻発しています。これにより、必要なインフラ整備や維持管理が滞る事態が生じています。
住宅市場の二極化:コスト高騰により、特に若年層や低所得者層にとって住宅の取得がさらに困難になり、持家率の低下や住宅市場の二極化が進む懸念があります。

3.今後の見通しについて

それでは、今後の建築業界の見通しはどうなっていくのうでしょうか。
 ・建設業「2024年問題」の影響と人手不足は中長期的に続き、労務費は今後も主要な上昇要因であり続けていくと思います。
 ・省エネ・脱炭素化への対応: 2030年、2050年に向けた脱炭素化の目標達成のため、断熱材、高効率設備、ZEH対応などの追加コストが不可避となっていくのではないでしょうか。
 ・円安の継続により、日本の金融政策が大きく転換しない限り、為替が大幅に是正される見込みは低く、輸入資材へのコストプッシュ圧力は続いていくのではないでしょうか。
上記のような要因を踏まえて今後、プロジェクトを推進する上では、従来の積算・契約手法を見直す必要があります。
資材価格が高騰するリスクを回避するため、基本設計段階から主要な資材の選定と見積もりを迅速に行い、可能な範囲で早期に発注契約を締結すること、建築物の機能や品質を維持しつつ、資材の代替品(国産材への切り替えなど)や工法の見直しによるコスト削減を早期段階から行うことが求めまれてくるのではないでしょうか。

4.まとめ

建築コストの変動は、国内の構造的な労務問題と、グローバルな為替・資源高という二つの強力な圧力が作用し、歴史的な高水準で推移しています。特に「2024年問題」を抱える労務コストは今後も高止まりする見通しであり、短期的な下落は見込みにくい状況ではないでしょうか。そんな中で、クライアントの想いをベストな形で具現化する為に日々の業務の中で自己研鑽を欠かさないように取り組んでいきたいと思います。