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2023/02/24 |  社員ブログ

地中の中の柱といえば杭

こんにちは。私は豊和開発株式会社の設計監理部で意匠設計、設計監理を担当している小浦です。前回、杭工事のために土を掘る話をしました。今回は土を掘ったその後、杭打ちについて話をしたいと思います。

杭打ちの為、土を掘った後、大きな丸い穴が開いています。この穴にコンクリートを流し込むと杭になりますが、ただ流し込むだけではありません。杭が地中で柱として成り立つためには、コンクリートの中に鉄筋が必要です。土の中では、様々な方向から杭に力が加わるので、この鉄筋がなければ杭が折れてしまいます。鉄筋は人間でいえば骨と同じです。骨がなければ人は真っ直ぐに立てないのと同じで、鉄筋がないと杭は地中で折れてしまい、建物を支えることができなくなり、結果建物は傾いてしまいます。それを防ぐ為に、土を掘った後、コンクリートを流し込む前に初めに鉄筋を入れるのです。その鉄筋は穴の直上から差し込んでいきます。丸い穴の中に地上で組みあがった鉄筋をクレーンで入れるわけです。その鉄筋は上から見ると穴に沿うような円の形をしています。

- 目次 -
CONTENTS

1.鉄筋を組み立て繋ぐ。

杭穴に差し入れる鉄筋は地上で組み立てられます。杭は円柱形なので、横向きの鉄筋は、丸い形をしています。丸い鉄筋を所定本数の縦向きの鉄筋で組み上げます。この円柱形に組まれた鉄筋を鉄筋かごといいます。鉄筋を結束して作られる為名前通り、鉄でできた籠のように見えます。数十メートルも掘削を行う場所打ち杭では、実際に地面深くまで潜って鉄筋を組み立てるのは難しいので、予め地上で必要な鉄筋を組み立てておく必要があります。組み上げられた円柱形の鉄筋を穴の直上に吊り下げ、穴の側面に接触しないように、穴が崩れてしまわないよう慎重に下ろしていきます。支持杭という杭先端が地球の固い部分の地盤で支持するものの場合、杭の穴は時に何十メートルもの深さになることがあります。しかし、鉄筋かごはトラックで運ぶことのできる長さの限界があり、限界以上の長さの杭を作る為には、複数の鉄筋かごを途中で繋ぐ必要があります。1本目の鉄筋かごを途中で止めて1本目の上部と2本目の下部とを繋ぎます。鉄筋と鉄筋をつなぐ方法としては、針金(結束線)で結束する。溶接する。ボルトで固定する等方法は色々ありますが、その時々の現場の状況に合わせて方法は決められます。

2.円周率

鉄筋を入れた後、コンクリートを流し込むわけですが、流し込む量の計算にも一苦労があります。杭穴の大きさとと深さでコンクリートの体積が割り出せます。体積は円の面積と長さで求められます。円の面積の計算には小学校で習った円周率π=3.14が使われます。円周率π=3.141592653589 793238462643・・・・、 円周率はどこまでも続く数字で10万桁以上も覚えた日本人の方もいるそうですが、残念ながらギネス記録には認定されていません。(ちなみにギネス記録は7万桁 でインド人の方が保持されています。さすが数学の国。)聞くところによると今の小学生は円周率π=3で計算する事もあるらしいですが、図面上で杭の直径2mの場合が半径が1mとなる。この時の円の面積は円周率π=3.14を使うと3.14m2となる。円周率π=3で計算すると3.00m2となる。円周率π=3として計算すると、求められる体積はかなり小さくなってしまいます。仮に、杭の深さが20mとすると体積の差は2.8m3となってしまいます。このように円周率π=3で計算すると大変な誤差が生じるので、業務では円周率π=3の値は使わず、円周率π=3.14で計算を行っています。円の面積は半径×半径×円周率π3.14で割り出す事ができます。

 

余談ですが、ここで大昔に使われていた円周率の計算方法についてお話します。古代にはコンパスや正確な定規などありませんでしたが、1本の糸と木切れを使うだけで、現在の円周率に近しい数値を割り出す事ができました。まず糸の両面に木切れをくくりつけて地面に円を描き,その糸をそのまま定規の代わりにして円に沿って、円周を測っていきます。すると糸6本分と少しが余ります。そこでこの糸を四つ折りにして余った長さにあててみると,かなり近い事がわかります。円周を L,半径を r,余りの長さを a とするとL=6r+aとなります。dは半径の1/4に近いので,a≒r/4 となります。L ≒ 6r+1/4r=2(3+1/8)rとなって円周を求める式は,L=2πrだからπ≒3+1/8=3.125 となります。現在のπは3.14なのでおおよそ同じです。木切れと糸だけでも,これだけ正確に測ることができるのできたのです。ちなみにこの円周率の求め方は,バビロニア(メソポタミアの古代都市)で使われていたもので、エジプト、黄河、インダスと並び世界四大文明の一つで最古の文明であるメソポタミアです。紀元前9千年に遡る歴史を持ち、古代文明発祥の地です。この時代にすでに ほぼ現在の円周率に近しい数値を割り出すことができていたなんて、古代人はすごいと思います。以上、木切れと糸があれば出来る、円周率の割り出し方のお話でした。

3.コンクリート

ここからは杭打ちでコンクリートを流し込む際の話に戻ります。円の面積×深さ=杭の穴の体積が割り出され、コンクリートを発注できるかと思いきや、まだ、計算すべき事があります。図面の杭穴の直径が1mの場合、実際の掘った穴はそれよりも少し大きくなってしまいます。穴を掘るドリルの直径が1mの場合、回しながら掘るドリルを引き抜いた時、若干穴は大きくなります。それに付け加え地中には、石・砂・粘土が混在している為、杭穴の途中で砂が崩れてしまったり、杭穴の途中に石が取れた穴があるかもしれません。コンクリートの流し込み量も、図面上よりも、少し多くなります。それを見越してコンクリートの量を計算しなければなりません。そしてコンクリートを運んでくる車はミキサー車です。大型のミキサー車は4.5㎥のコンクリートを運ぶことができます。コンクリートの量÷4.5㎥でミキサー車の台数が決まるのです。コンクリートの量が4.5㎥の倍数なら、ちょうど整数の台数になりますが、そうはうまくいかないのが現場の常です。また、コンクリート工場から現場まで運ぶのには、勿論時間がかかります。コンクリートの発注に無駄が無いよう、コンクリートを流し込んでから最後の端数分を手配するのでは時間のロスがあります。事前に最後のミキサー車でコンクリートの量を調整し、ほぼぴったりとなるよう手配するのが現場での腕の見せ所といえるでしょう。

4.まとめ

杭の為の穴にコンクリートを流し込む量は、掘る量と同様に図面の数値とは違うということを考えて計算しなければなりません。ここでも各建設現場ごとにその時の地盤の状況で、図面上では同じ杭でも、掘った穴ごとに流し込むコンクリートの量は変わってきます。固い地質と柔らかい地質によっても土の崩れ方が変わるので、コンクリートの量の計算も自然との闘いになるわけです。建築とはまさに自然を考え、その時々の状況を考えなければなりません。単なる計算だけではなく、経験と知識が必要になってきます。ここでも数字での戦いがあります。答えの無い戦いだからこそ、建築をしていると自然が好きになり数字が好きになり計算が好きになっていきます。

今後も、そんな自然と数字に関わる話をさせて頂けたらと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。