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2022/03/25 |  社員ブログ

パッシブデザインについて

こんにちは。私は豊和開発の設計監理部で建物プランの作成や確認申請、意匠設計などを担当しております野田と申します。
昨今、TVや雑誌などで国連によって掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)が取り上げられ、目にする機会が多いと思います。国連のホームページにはエネルギーについて以下のようなデータがあります。

・エネルギーは気候変動を助長する最大の要素であり、全世界の温室効果ガス排出量の約 60%を占めている。

・2015年、最終エネルギー消費に再生可能エネルギーが占める割合は 17.5%に達した。

補足:
【最終エネルギー消費】 産業活動や交通機関、家庭など、需要家レベルで消費されるエネルギーの総量
【再生可能エネルギー】 資源が再生されるエネルギー。太陽光・太陽熱・風力・地熱などの自然エネルギー、生物を利用したバイオマスエネルギー、廃棄物発電などのリサイクルエネルギー

以上の事実などを踏まえ、SDGsでは「エネルギーをみんなに そしてクリーンに。手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する 」という目標のひとつが掲げられました。
今回は正しくそのテーマに適したものである「パッシブデザイン」について、パッシブデザインとはどういったものなのか、またどういった手法・効果があるのかについて、ご紹介したいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.パッシブデザインとは

パッシブデザインとは、「地域の気候風土にあわせた建築物自体のデザインで、熱や光や空気などの流れを制御して、地球環境への負荷を極力少なくするとともに、快適な室内環境を得る設計手法」です。その不足分を機械的な手法(建築設備)で補います。よって、自然採光、自然通風、屋上緑化、水平ルーバー(南面)、垂直ルーバー(東西面)、日射遮蔽、高断熱などの様々な建築物自体の工夫(建築的手法)を適切に組み合わせ、できるだけ快適な室内環境を確保することがテーマの一つとなっています。

2.具体的な手法(開口部廻り)

それではパッシブデザインの具体的な手法について述べていきたいと思います。
まずは開口部廻りの具体的な手法ですが、以下のようなものがあります。

(1)トップライト・高窓
吹抜け空間や光庭(光を取り入れるための庭)を積極的に利用したり、トップライト・高窓から自然採光を取り入れ、開閉式とすることで、自然通風による外気の取り入れや換気により、照明の電力負荷や空調負荷を低減することができます。また「排煙窓」としても有効であり、防災上の配慮にもなります。

(2)ルーバー・庇・バルコニー
夏期の日射遮蔽を行うため、南側開口部には水平ルーバー、庇、バルコニーなどを設け、東・西側開口部には可動式垂直ルーバーを設置します。ルーバーを使い分ける理由は、太陽が南側にある時は太陽高度が高いため、水平ルーバーが効果的ですが、太陽が東・西側にある時は太陽高度が低いため、垂直ルーバーを調節することで日射遮蔽を行うためです。

(3)窓ガラス
日射遮蔽効果や断熱効果の高いLow-E複層ガラスを採用します。
断熱効果により空調負荷を低減させることが出来ます。

(4)開口部の方位
地域の卓越風向(ある地点において、日ごと、または年間を通じて一番吹きやすい風向き)を考慮し、効果的な通風を得ることで、夏期の冷房エネルギーを軽減します。

(5)光庭(ライトコート)
光庭(ライトコート)は、外壁面から離れた内部に採光や通風を取り入れるための中庭や空間のことで、ロの字型の平面計画となることもあります。

3.具体的な手法(その他)

続いて、開口部以外のパッシブデザインの手法を述べていきたいと思います。以下のようなものがあります。

(1)屋上緑化・植栽
夏期の日射による熱負荷を低減するため、屋上を緑化し、敷地内には積極的に植栽を施します。夏期には日射を遮蔽し、冬季には建物内に日射を導入できるように、落葉高木などを敷地の南側や西側に植えることも有効です。

(2)建築物の形状
東西に長い長方形の敷地であれば、敷地形状を活かし、建築物の東西を長く計画し、南面の面積を大きくすることにより、夏期及び冬期の熱負荷を低減することができます。南面は、東・西面に比べて夏期の日射量が少なく(太陽高度が高いことによる)、冬期の日射量が多い(太陽高度が低いことによる)ためです。

(3)井戸水の利用
井戸水は、屋上の散水などに利用します。水のような液体物質は気体になるときに周囲から熱を吸収します。その蒸発冷却効果を利用して、夏場の熱環境を改善することで、空調負荷の低減につなげることができます。

4.まとめ

ご紹介させて頂いたように、パッシブデザインには様々な手法があります。機械設備を積極的に導入すれば、快適な空間を手に入れることは出来ますが、それにはコストがかかり、また資源を必要とします。せっかくの自然のエネルギーを設計に活かさない手はありません。自然エネルギーだけでは満たされない部分を機械設備が補うというのが、理想的ではないかと思います。
今後ますます注目を集めるパッシブデザインですが、自分自身の設計においても、積極的に取り入れていければと考えています。