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2024/09/13 |  社員ブログ

給与計算における社会保険料の取扱いについて

豊和開発株式会社で経理を担当している木村と申します。
弊社では給与計算を経理にて行っておりますが、給与計算は間違ってはいけない重要な月次業務の1つということで、毎月慎重に行っています。その中でも給与計算で必須の知識である「社会保険(料)」についてまとめてみました。
給与計算初心者の方、また社会人1年目の方などが給与から徴収されている社会保険料はどう計算されているのか?ということを理解しやすいよう、給与計算における社会保険料の取扱いについて、重要なポイントをまとめてみました。
なお、前提として、社会保険料については、中小企業が加入することが多い協会けんぽでの社会保険料について説明しておりますので、協会けんぽ以外での健康保険組合加入の会社の場合、計算の方法が違いますので、ご注意ください。

- 目次 -
CONTENTS

1.社会保険料の計算方法とポイント

社会保険というと、広義な意味では健康保険・介護保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険を指しますが、給与計算上でいう社会保険といえば、狭義な意味で言うことが多く、健康保険・介護保険・厚生年金保険のことを指します。(下図の通り)
給与計算における社会保険料の計算において、覚えてほしいポイントは下記の通りです。

 

①標準報酬月額(毎月受ける給料などの報酬の月額を区切りの良い幅で区分したもの)をもとに社会保険料を計算する
②労使折半(労=労働者、使=使用者、半分ずつ負担する)であること
③翌月徴収である(当月分の社会保険料は翌月支給分の給与から徴収)であること

 

具体的には
①標準報酬月額×料率(%)という式で社会保険料を計算します。
例えば、毎月受ける報酬の額が25万の場合、標準報酬月額は26万となり、健康保険料は26万×10.29%(健康保険料率)=26,754円となります。
同じように介護保険料率1.82%、厚生年金保険料は18.3%の料率をかけて計算します。
なお、この10.29%、1.82%は大阪府の場合の料率で、都道府県ごとに料率が異なります。厚生年金保険料率については、全国一律18.3%で固定となっています。
標準報酬月額は毎年1回、必ず見直しがありますが、これを「定時改定」と呼びます。
②①で計算した健康保険料、厚生年金保険料の半分を給与から徴収します。①で計算した健康保険料で計算してみると、26,754円÷2=13,377円を徴収します。なお、小数点以下端数が生じた場合は、50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げで計算します。
③例えば、4月1日に入社した新入社員は4月分から社会保険料が発生しますが、4月分の社会保険料は5月支給分の給与から徴収(天引き)します。

 

※当月徴収としている事業所もありますが、基本は翌月徴収です。
※記載の料率については、令和6年8月現在のものです。年度ごとに料率の改定がありますので、その時の料率を用いるようにしてください。

2.労働保険料について

上述の通り、労働保険料は労災保険料と雇用保険料のことを指しますが、給与計算における労働保険料のポイントは

 

①労災保険料は全額使用者負担(会社負担)
②雇用保険料は使用者と労働者が料率に応じてそれぞれ負担

①の労災保険料についてですが、全額使用者(会社)が負担するので、給与計算における天引きはない(労働者の負担はない)ということになります。
②は折半ではなく、使用者は〇%負担、労働者は〇%負担と決められておりますので、その料率(%)に応じて計算します。給与計算では労働者負担分を計算し、その額を徴収(天引き)することになります。

3.月ごとに注意が必要なポイント

月ごとに注意が必要なポイントを覚えておき、その月には忘れず重要ポイントを確認するようにすると、ミスが起きにくくなりますので、あわせて下記事項も参考にしてみてください。

 

4月:雇用保険料率改定の有無確認
   →改定がある場合新料率で計算し、徴収する
   健康保険料率・介護保険料率・厚生年金保険料率改定の有無
   →改定がある場合は新料率で計算し、徴収する
   4月入社新入社員の雇用保険料徴収開始
5月:4月新入社員の社会保険料徴収開始
7月:月額算定届提出(標準報酬月額の改定届出 定時改定)
10月:月額算定届をもとに計算された標準報酬月額による社会保険料の反映(9月分から改定のため、翌月である10月から新しい標準報酬月額で計算した社会保険料を徴収する)

 

給与計算における社会保険料という観点だけで行くと、4月に対応しなくてはいけないことが多く、4月は特に注意が必要であることがわかります。

4.その他覚えておくと良いポイント

・介護保険の徴収は満40歳に達した時から
この「満40歳に達した時」がいつかというと、「誕生日の前日」という決まっています。
例えば、9月1日生まれの場合、8月31日が満40歳となったときになるため、「8月分」から介護保険を徴収する必要があります。つまり翌月徴収のため、9月支給分の給与から介護保険料の徴収がはじまります。
9月2日生まれの場合は、9月1日が満40歳になった時→「9月分」から介護保険を徴収→10月支給分の給与から介護保険料の徴収開始、ということで1日違うだけで取扱いが異なってきますので、注意が必要です。

 

・標準報酬月額の随時改定
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料計算のもとになる、標準報酬月額ですが、昇給・降給などで固定的賃金に変動があった場合で、従前の標準報酬月から2等級以上差が生じた場合は、毎年1回の改定を待たず、標準報酬月額の改定手続きが必要です。これを随時改定と呼びます。
よって、昇給や降給などで固定的賃金に変動があった場合、随時改定の対象ではないか?とシミュレーションをし、対象であると確認できたら、もれなく届出ができるよう、早めに準備をするようにしています。

5.まとめ

給与計算には、その他所得税や住民税の徴収などの要素があり、それらの知識も必要になりますが、今回は社会保険料にスポットライトを当ててまとめてみました。
誕生日が一日違うだけで取扱いが変わったり、注意が必要になったりと、慎重に考えて給与計算に反映させる必要があります。
今は、給与計算ソフトを使って給与計算をすることが多いと思いますが、基本的な知識がないと、仮に給与計算ソフトの設定が間違うことで給与計算自体を間違っていても、給与計算担当者がそれにすら気づけない、ということにもなりかねません。

ソフトばかりに頼るのではなく、まずは基本的な知識を身に着けて応用できるようにすると良いかと思います。