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2024/02/16 |  社員ブログ

「扇垂木」ってなんですか?

こんにちは。豊和開発株式会社の設計監理部に在籍しているTです。
今回取り上げるテーマとして、私が特に惹きつけられてより建築を好きになった一つのきっかけである、木造建築物にまつわるものを皆さんにも知ってもらえたら、という思いで「扇垂木」というテーマを選びました。このコラムを読んで、少しでも建築に興味を持ってもらえたり、魅力を感じてもらえたら嬉しいです。

扇垂木と言う言葉は聞いた事がありますか?
建築系の教科書に載っているけれど、なかなか深堀しない内容のひとつだと思います。しかし、これを知れば伝統的な木造建築物を見る際や、寺社仏閣などに行く際、その宗派や年代を推測することができたり、その建築物の背景を知ることが出来て、建築巡りを楽しめる要素にもなることだと思うので、扇垂木の特徴や魅力をお伝えできたらと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.そもそも「垂木」ってなんですか?

垂木(たるき)とは、木造建築物の屋根構造において、主に屋根を支えるために配置される構造材料の一つです。
垂木は通常、屋根の傾斜部に沿って配置されていて、屋根の荷重を支える働きを担っています。
瓦屋根など重量の重いものを支えるためにとても大切なものなので、大きくて重い屋根にはたくさんの垂木が配置されています。
屋根の形状や機能によってさまざまな種類の垂木が採用され、また、年代や地域、宗派によっても特徴が異なってくるのもとても興味深いと思います。

近年の木造建物物では防火上の問題もあるので、軒裏をふさぐことが多く、完成している建物ではなかなか見ることが少なくなったと思いますが、実際には屋根裏に隠れていたりします。
また、お寺や神社、伝統的建造物群保存地区(城下町,宿場町,門前町など全国各地に残っている歴史的な集落や町並みの保存を行っている地区の事)などでは、よく目にする事が出来ます。

2.木造建築物の歴史(奈良時代~江戸時代)

奈良時代:奈良時代には仏教寺院や宮殿が建てられるような時代です。木造の寺院が盛んに建築され、寺院建築が発展した時代です。

平安時代:平安時代には都が京都に移りました。貴族文化も栄えて、寺院や宮殿のほかにも、庶民の住居や茶室が木造建築で築かれました。

鎌倉時代:武士の時代である鎌倉時代。武家屋敷や城郭が木造で築かれました。防御の観点から、木造の城が多く建設されました。

室町時代:室町時代には、茶道や禅宗の影響をうけた建築が広まりました。簡素で自然と調和する美意識が反映された建築が増えたことでも知られています。

安土桃山時代:戦国時代から安土桃山時代にかけて、豪華絢爛な建築様式が栄えました。城や武家屋敷が特に注目された時代です。

江戸時代:平和な時代が続いた江戸時代では、商業や庶民文化が栄え、町屋茶室、歌舞伎座などが木造で建てられました。

これらの時代を通じて、日本の木造建築は地域や時代によって異なる様式、特徴をもって進化してきました。

3.平行垂木と扇垂木

写真の左にあるものは、「平行垂木」と呼ばれているもの、右にあるものは「扇垂木」と呼ばれているものになります。
ぱっと見ただけでは、あまり差が無いようにも思えますが、扇垂木の方を見てもらうと、扇のように広がっている様子が見れます。似ているもののように思えますが、この二つには大きな違いがあります。

平行垂木はその名の通り、すべての垂木が平行に配置しているので、屋根の隅角部で部材の長さが異なってくるだけで、施工時に特段手間を取ることは少ないと思います。しかし、この隅角部の垂木は、屋根の荷重を受けることの無い位置に配置していますので、垂木本来の目的である、屋根の荷重を支える、という事ができない垂木になります。
言ってしまえば意匠のためだけの飾りになります。

それと比べて、扇垂木はひとつひとつの木材の角度が異なっています。なので、一本一本、カットする角度が異なるので、計算してきれいに木材をカットしないと、隙間が生まれたり、不均一に見えたりします。つまり、施工時の事を考えると、ものすごく手間になってしまうのです。しかし、構造的な面で見てみると、全ての垂木が屋根の荷重を支えるものとして作用することとなるので、平行垂木に比べて構造的に有利になります。
また意匠的にはどうでしょうか。これはそれぞれ人の感性にもよりますが、扇垂木の方が繊細で広がりを感じるようにも思います。
これだけ複雑な部材にもなるので、大工さんの技術ももちろん必要ですが、お金も必要になってきます。つまり扇垂木を見かけたら、大工さんがこだわりを持って作っていたり、お金をそれだけ出すことのできる方が所有している、という事も推測することが出来ます。

いかがでしたでしょうか。
垂木にも種類があり、なぜ異なる工法があるのかを知ることで、その建築物に対する背景を考察する事も出来ると思います。
こうした知識がきっかけでもっと建築に興味を持つ人が増えたらと思います。
ぜひ木造建築物を見るときは、屋根を見上げてみてください。