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2024/08/16 |  社員ブログ

複式簿記について

こんにちは。経営企画部の村上です。私は、部内で主に経理を担当しております。
経理は、日々の取引の記録やお金の動きを可視化して正確に管理することが重要な役割です。
管理するためには簿記が必要となります。簿記とは、企業における日々の取引や経営活動などを帳簿に記録、計算し、業績と財務状況を明らかにする技術を指します。
簿記には、単式簿記と複式簿記がありますが、今回はこの複式簿記を取り上げたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.複式簿記とは

まず複式簿記の内容に入る前に簿記と会計について触れていきます。そもそも簿記とは「帳簿記入」の略したものであり、経営活動を行う財産の増減や出納情報、営業取引の情報を細かく帳簿に記録するものです。      

一方、会計は簿記で記録した内容をまとめて、利害関係者(株主や債権者)に対して財務状況や利益を報告することを指します。そのため、簿記は会計の一部ともいえます。

 

事業を行う上で、商品・製品・サービスの売買、設備投資など各種固定資産の購入、営業活動に関する各種費用など、日々さまざまな取引が発生します。それらに伴うお金の流れを簿記によって記録することで、営業実績や経営状況の把握ができます。

決算期には、この簿記をもとに貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成するため、簿記は重要な役割を担うことになります。

 

複式簿記とは、取引の原因と結果という2つの面を同時に会計帳簿に記録する簿記方法です。

方法としては、「借方」と「貸方」という2つの面からそれぞれに勘定科目を用いて記録します。借方は複式簿記の左側に記載し、貸方は右側に記載します。左側、右側の合計は必ず一致するのが原則です。

現金が増えた場合、借方に現金の勘定科目と金額を、減った場合、貸方に現金の勘定科目と金額を記載します。

次は、複式簿記がどのように誕生したのか見ていきたいと思います。

2.複式簿記の誕生

複式簿記の誕生時期については、諸説あり、最も有力と考えられているのは、14世紀頃であり、ベニスの商人が採用し始めたのが最初であるというものです。

 

中世の頃、貿易船は、一つの航海が終わると、その収支を調べ財貨を分配するというものでした。これは「ベニス式簿記法」と呼ばれ、その基本原理は現代の複式簿記にもほとんど形を変えずに残っています。

ベニス以外の商人や一般の人々にも複式簿記が広まるきっかけは、イタリアの数学者ルカ・パチョーリの著書である「ズンマ」です。「ズンマ」は、その当時の算術等の知識を集大成した数学書で、その著書の中に「計算および記録要論」として複式簿記の記述があります。

 

パチョーリは、自身の哲学に基づき、継続した商売を行う為には、「現金」「帳簿」「複式簿記」の3つが必要不可欠と説いており、これが支持され、年月の経過とともに、複式簿記が広まっていくことになります。

特にイタリアでは、複式簿記の客観性や信頼度が非常に高く、複式簿記による帳簿記録がそのまま法廷での審理の際、証拠として認められるということがあったそうです。

 

時の経過とともに、複式簿記はヨーロッパの他の国にも徐々に定着を始めます。
大恐慌があった1660年頃のフランスでは、倒産する会社が続出し、資産を隠すために偽造倒産までする会社も現れました。

フランス国王ルイ14世は「倒産時、会計帳簿を裁判所に提示することを義務付け、提示できなかった場合死刑に処する」という法律を制定しました。この法律により、倒産する会社が減少していきフランス経済も復興し始めることとなりました。

 

複式簿記は、ヨーロッパ全体に広まっていき、18世紀から19世紀のイギリスの産業革命時においてもその有用性から広く採用され活躍することになりました。
次は、世界中で使われている複式簿記がどのタイミングで日本で使われるようになったかを見ていきます。

3.日本で採用されるまで

複式簿記が日本国内で本格的に採用され始めたのは、明治時代に入ってからでした。

日本では、大蔵省が招聘したイギリスの紙幣頭書記官アレキサンダー・アラン・シャンドの「銀行簿記精法」が、日本に初めて紹介された複式簿記とされています。

翌年には、福沢諭吉のアメリカから持ち帰った専門学校のテキストを翻訳した「帳合之法(ちょうあいのほう)」が出版され、この2つが、日本へ複式簿記が日本へ広まっていくきっかけとなります。ちなみに貸借対照表と訳し、借方、貸方と翻訳したのも福沢諭吉です。

 

明治9年には、大蔵省へ「簿記法取調掛」が設置され、明治11年に「太政官第42号通達」にて複式簿記を採用することとなりました。
会計帳簿作成に当たっては会計原則というものを準拠する必要があります、次はこの企業会計原則について触れていきます。

4.日本における複式簿記

複式簿記は、企業会計原則の一般原則のひとつ「正規の簿記の原則」の要件を満たしている帳簿記録であり、企業会計原則とは、企業が会計業務を行う上で従わなければならない原則となります。

企業会計原則は法律で定められてはいませんが、すべての企業が会計処理するにあたり、従うべき基準となります。

 

企業会計原則は一般的に公正妥当と認められる会計基準を構成するための基本原則です。企業会計原則の一般原則には次のように記載されています。

 

企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則にしたがって、正確な会計帳簿を作成しなければならない

 

上記原則の「正確な会計帳簿の作成」は、以下の「正規の簿記の3要件」を満たしている必要があります。

 

正規の簿記の3要件とは
①網羅性:すべての取引が漏れなく記録されていること
②秩序性:秩序立った一定のルールに基づいて記録されていること
③検証可能性:事後に検証可能な資料に基づき記録されていること

 

この企業会計原則に準拠した会計帳簿を作成することで青色申告することができます。青色申告では、65万円(電子申告でない場合55万円)の控除を受けることができます。

青色申告には特典が多く、65万円の控除以外にも赤字の繰越や、30万円未満の固定資産を全額経費にでき、中小企業では年間300万円まで認められるなど税金面でも有利になります。

これらはすべて複式簿記を用いて会計帳簿を作成していることが前提となっています。

 

このように人類最大の発明の一つと言われている複式簿記は、日本だけでなく、あらゆる資本主義国家の発展に貢献しています。