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2022/04/01 |  社員ブログ

騒音対策について

こんにちは。
私は設計監理部で意匠設計、工事監理等の業務を担当しています谷口です。弊社では保育施設の設計を毎年させて頂いております。そこで、設計を行う中で必ず話に上がってくる「騒音対策」について今回はお話しさせて頂きたく思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.都市型の保育施設

弊社では大阪市内での保育施設の設計を行う事が多々あります。都市型の保育施設です。そこで、話に上がってくるのが「騒音対策」についてです。各建物が密集している市内では、ときに園児の声が騒音として近隣に影響を与える事があります。園と周囲の皆様とが、良好な近隣関係を保持できるよう、設計段階から各対策方法を検討しつつ計画してまいります。

2.内装材での対策

まずは内装材での対策についてお話し致します。園児が大半の時間を過ごす保育室は騒音対策に重きを置いて内装材の選定を行います。家庭の居室では、カーテンや絨毯等で音の吸音しますが、保育施設ではカーテンは巻きつけの危険性があったり、絨毯は嘔吐等で汚れが落ちにくかったりするので使用を避ける事が多いです。おのずと保育室は吸音性の低い部屋となり、園児の声がダイレクトに部屋全体で反響し落ち着きの取れない空間となってしまいます。そこで弊社では天井材に吸音性の高い「岩綿吸音板」を張る事をお施主様に提案しております。岩綿吸音板は、ロックウールという素材で作られています。ロックウールは、岩石を高温で加熱して作る人工鉱物繊維で、多孔質な性質を持ちます。 多孔質な性質は柔らかく折れやすいですが、耳障りな反響音を吸収し、静かな室内環境を実現してくれます。少し細かいお話になりますが、なぜ多孔質素材が音の反響を吸収するかというと、材料中に多数の空隙や連続した気泡に音が当たると、材料中の空気が振動する際に抵抗が働き、音のエネルギーが繊維間の摩擦によって熱エネルギーに変換され、吸音効果が生じるという事です。また、岩綿吸音板は法定不燃材料として認められており、火災によって火熱が加えられた場合に、一般の建築材料と比較して発火が遅い材料となっています。近年では、デザイン性を考慮された柄や色が各メーカーから発売されており、意匠面でも期待をもって選定出来ます。
また、保育室を隔てる壁の構成については、壁の内部に「グラスウール」を充填します。グラスウールも上記同様に多孔質な性質となり音の吸収を行い、各保育室の音漏れを防ぐ働きをします。

3.外壁材での対策

外壁材では、ALCパネルやサイディングを多く採用させて頂いています。その理由として、施工性・経済性、そして、遮音性が良いといったメリットが上げられます。ALC・サイディング共に内装下地材と合わせて少なくとも約-30dB(デシベル)を下回る音の遮音が見込めます。dB(デシベル)とは透過損失ともいい、界壁を隔てて隣の部屋の音を聞いたとき、どのくらい音が小さくなったかを表します。界壁が薄く音がそのまま通過するような場合は、その数値が高いほど大きくなり、dB(デシベル)も大きな数値となります。また、外壁開口部には、防音サッシの二重サッシや複層ガラスを用いたサッシを計画します。弊社では複層ガラスを用いたサッシにて防音サッシを提案する事が多いです。構成としては、異なる厚さのガラスを組合せ遮音性を確保します。 同じ厚みのガラスで構成すると音の透過時に共鳴が起き、音の遮音性能は期待できません。厚みの異なるガラスにて構成し音の共鳴を防ぎ、外からの騒音をカットするとともに、室内の音漏れを防止します。このようにして、外壁以外の開口部でも約-30dB(デシベル)の遮音が見込めるよう計画してゆきます。ガラスの厚みについては、ガラスの種類・大きさ等詳細条件にて決定してゆきます。余談となりますが、複層ガラスは断熱性能も期待できます。2枚のガラスで中空層をつくることで1枚のガラスよりも優れた断熱性能を確保し、 窓から逃げる暖房熱の量を減らし節電に貢献します。また、複層ガラスの1枚をLow-Eガラスとすれば高断熱と遮熱を両立でき、 夏は涼しく、冬は暖かな環境を確保出来ます。(Low-Eガラスを室内、室外どちらに配置するのが望ましいかは、各地域によって異なります。)このようにして、建物外に音が回らぬよう、各建材の選定を行って行きます。

4.まとめ

以上が私なりに、保育施設を設計する中で気を付けている「騒音対策」となります。防音について勉強するなかで、ガラスの厚みの違いによって防音効果が有る等驚く事が多かったです。また、音の伝わり方も奥が深く、防音対策として計画しても、建材の納まりひとつで逆効果となる場合もあります。ですので防音対策は、視野を広く、そして様々な資料を見比べ慎重に知って行く事が重要と思います。設計させて頂いた施設に通う園児の皆さんが、落ち着いた空間で園生活をおくれるよう心して、引き続き設計業務に励んで参ります。