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2023/05/19 |  社員ブログ

高圧線が通過する土地で土地活用をするには?

家の近所を歩いていてふと上空を見上げると高圧線が目に入ることがあり、高圧線が通過している土地は意外と多くあるのだなあと感じます。
高圧線の真下に戸建て住宅があるのを見かけることは少なくないですが、一方で高圧線の真下であることが原因で、一切の建物を建てられない権利が掛かっていることもあります。
これは登記簿謄本により確認をすることができますが、土地活用を検討した際にこの事実を知り、困惑した土地所有者様もいらっしゃるかもしれません。
それでは土地の大部分に高圧線が通過しており、一切の建物を建てられない権利が掛かっている場合、土地活用は不可能なのでしょうか?
実はそうとも限りません。
今回のコラムでは、高圧線の真下の土地(以下「高圧線下地」といいます)における、建築制限の内容や制限の緩和方法について見ていきたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.地役権が設定されていても建物を建てられる?

まずは先程の「登記簿謄本によると一切の建物を建てられないはずの土地において、土地活用ができる可能性がある」という話についてです。この一見矛盾したような話には、以下のような理由があります。

昭和40年頃までに地役権設定をされた土地における地役権設定契約は、一律で、高圧線下地に一切建物を建てられない内容となっていました。しかし、それ以降に設定された土地については、電線が17万V未満の場合は元から建築制限が緩和されています。つまり、謄本上は建築が不可とされていても、現在の基準に則れば建築制限の緩和対象であり、条件が揃えば建築が可能となる場合があるということなのです。

そういうことなら、登記簿謄本に記載の内容だけで判断をするのではなく、建築制限の有無や内容について調査をしてから、土地活用ができるか判断した方が良さそうです。
それではどのように調査していけば良いのでしょうか?

2.調査方法

高圧線下地において、どのような建物なら建てることができるかを知るには、まずは以下のようなことについて調査すると良いでしょう。
① 高圧線下地における電力会社との契約関係(地役権設定の有無など)を確認
土地所有者様が当時の契約書を所有されていればすぐに確認できますが、その他にも登記簿謄本の権利部などで確認することができます。
ところでなぜ、地役権が設定されていることが多いのでしょうか?
電圧が高圧となる場合、安全上の理由から電線と建物との間に一定の距離を取るなどの利用制限が課されるため、電力会社と土地所有者様との間で土地利用に関する合意を締結します。また、電力会社は地役権の設定登記をすることで第三者に対抗することができ、高圧線下地に立ち入ることができるようになるのです。
② 対象不動産を通過する電線の近くの鉄塔に表示された設置者(電力会社など)を確認
③ ②で調べた電力会社に建築制限の内容を確認
送電線の使用電圧は17万V以上か未満か(これによって建築可能かの判断が異なります)?
最も低い電線から建物まで離隔すべき距離は何mか?
地役権の設定内容や緩和の方法は?
といった内容です。

3.制限の緩和方法

地役権が設定されている土地においては、一般的に電力会社から権利設定当時に一括で(もしくは一定期間ごとに)補償料を支払われています。一切の建築が認められない部分において、建物を建てられるよう、地役権設定契約の内容を変更するにあたって、建築制限の緩和をするために補償料の一部を返還する(ここでは「空間の買戻し」といいます)必要があります。
地役権を設定し土地利用を制限することに対し電力会社は対価を支払っているため、土地所有者様はその対価のうち、制限を緩和するだけのお金を返す必要があるということです。このように、電圧にもよりますが、一切の建築が認められていなかった土地において、技術的な問題(建物の高さなど)がない範囲で、空間の買戻しにより建築ができるようになるのです。

空間の買戻しまでの流れ
① 電力会社に対して地役権変更契約を依頼
② 電力会社が買戻し価格を提示
③ 買戻し価格の金額合意
④ 電力会社にて計画する建物の建築可否を検証(測量・建物の高さや建築を避ける範囲の検証)
⑤ 地役権変更の契約・変更登記
⑥ 建築可能
※電力会社により異なることもあるため、あくまで一例となります。
買戻し価格の提示や検証に費用はかかりませんので、結果によって変更依頼を取り下げることは可能です。

4.制限内容や考慮すべき内容

空間の買戻しにより建築が可能となっても、あくまで制限が緩和されるのであって、考慮しなければならない点は複数あります。
例えば、建築物の高さ・電線との離隔距離確保・爆発性のあるものの設置禁止・保守運営のための電力会社の立入許可・竹林の生育の制限・屋根材の抵抗値・施工方法などです。
その他、高圧線が通過する土地については、悪影響を及ぼすような程度ではないとされるものの、電磁波の健康への影響などを心配し嫌悪施設として扱われることがあり、土地に対して低い評価を受けてしまうことがあります。したがって、借り手や買い手が見つかりにくい傾向にあることは否めません。

5.まとめ

ここまで、高圧線下地における建築制限の内容や緩和方法について見てきました。
電力会社に問合せを行えば、建築可否について無償で返答してもらうことができるものの、権利関係や建築可否に関わる担当窓口と制限緩和による技術検証についての担当窓口(測量や計算・図面への落とし込みなど)は異なるケースが多く、知りたい内容を明確に理解していなければ、必要以上にあちこちに問合せを行うことになり、情報を正確に知るまでに苦労することも多いです。
初期段階での建築制限の内容についてはもちろん、買戻し価格の提示依頼や実際に建物が建てられるかの検証は、土地所有者様からの委任状があれば設計会社を通して行うことができます。
高圧線下地にて土地活用を検討している土地所有者様がいらっしゃれば、まずは気軽にお問合せいただければと思います。