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2024/06/07 |  社員ブログ

木造建築物の今後の可能性について

現在、世界的な「脱炭素社会の進展・カーボンニュートラル達成」を目指す動きが拡大され、サステナビリティに一層配慮した企業活動や経済活動が求めてられています。
そんな中、建設業界では「木造建築物」が注目を集めています。日本は森林に恵まれており、古くから木は生活の中で非常に密接な関係にありました。その中で木造建築の優れた技が育まれ、継承されています。

 

しかしながら一定規模以上の木造建築物については防火上の問題で建築制限がかけられていましたが、「建築基準法の改正(2000年)」以降、条件を満たせば木質材料でも耐火建築物が建てられるようになり、さらに「木材利用促進法」の施行により低層建築物の原則木造化が推進されました。

 

木造の建築物は、環境負荷の低さや性能がここ数年で格段に進化していることで注目されているだけでなく、建築基準法改正(2020年)以降、耐火や準耐火に関する基準の見直しや整備によって利用の可能性が広がり、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」によって、木材利用の推進対象が公共建築物から一般建築物に広がっています。
例えば、「高層木造ビル」といった今までには考えられなかった建築物が続々と登場しています。

- 目次 -
CONTENTS

1.木造高層建築について

世界ではいま、「木造高層建築」がブームとなりつつありますが、木材を使った高層ビルや大規模建築が急速に増え始めたのは、2020年代になってからです。
純木造の建築物は少ないものの、柱や梁・内外装材に木材を多用し鉄骨や鉄筋コンクリートと組み合わせて造る地上6階建以上のビルは、都内だけでも数十棟を大きく超えているようです。

今年の1月には三井不動産が、日本橋(東京)に国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビルを着工しています(設計施工は竹中工務店)。

ビルは地上18階建。高さ84m、延床面積は約2万8000㎡で、使用する木材量は国内最大級の1100㎥ 超えとの事。CO2固定量は約800t-CO2を見込み、同規模の一般的な鉄骨造オフィスビルの躯体部分と比較して、建築時のCO2排出量は約30%の削減が期待されるそうです。竣工は2026年を予定しています。

他にも、現在開発中との事ですが秋葉原で予定されている9階建オフィスビルでは熊谷組の新技術により日本初の1.5時間耐火構造梁を採用するとの事。

 

そんな木造高層建築の使用木材についてですが、「CLT」という材料を使用する事が多いです。
次の項目では高層木造建築に欠かせない「CLT」について詳しくご紹介していきます。

2.CLTとは?

CLTとは、「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)」の略称で、交集成板(繊維の方向が直交するように積層接着した木質系材料)の事です。
CLTは合板と集成材の良い部分を重ねたような特徴がありますので、欧米を中心に、住宅などの建築物の壁や床材として利用されています。

その他にも柱・梁など、あらゆる部材として利用する事ができます。他にも引っ張り強度が「コンクリートの5倍」と非常に強く、大型高層ビルにも十分対応可能な上、材料自体が「鉄筋コンクリートの4分の1の重さ」という軽さもメリットで、大型建築に必要な「地盤補強」の手間が掛からない事が多く、建築物のスリム化にも役立ちます。
CLTは工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入しますので、所謂「プレハブ化」による工期の短縮が期待できます。

また接合具が非常にシンプルなので、作業自体も簡潔である事がメリットです。

 

このように現場での施工性が非常に良い事から、パネル工法や部分利用といった様々な可能性を秘めた木材といえます。

CLT構造の外壁は2018年に2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得しており、これによってCLT外壁が中高層ビルにも利用する事が可能となりました。

3.今後の木造建築

国は、「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」を設置し、CLTの幅広い積極的な活用に取り組んでいる為、今後もCLT部材を利用した木造高層耐火ビルの建設が増える事で国産材の新たな需要や新しい産業分野が創出されるものと期待されています。

CLTを活用した建築物の竣工件数ですが、最近の動向として首都圏以外や学校施設での活用事例などが示されており、令和5年度に累計で1000件を超えています。更に2025年大阪・関西万博の日本館も、CLTを活用して建築されるようです。

 

建物火災時の耐火性能を持つ新たな木質系材料が誕生した事で、鉄骨とのジョイントなどの技術開発を各社ゼネコン・メーカーが進めてきた結果、木材の弱点や課題であった「燃える・折れる・腐る」が克服され始めた事で中高層という難題が解消されつつあります。
先に説明した関係法令の合理化や建築技術の進展によって、中高層建築物の木造・木質化を図りやすくなっていますので、今後も増えていくと思われます。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?

冒頭でも記載しましたが現在世界的な流れとして「脱炭素社会・カーボンニュートラル」を目指し、企業努力が求められています。

 

ここ日本においては戦後植林された森林資源が本格的な「利用期」に入っていることから、積極的に木材として活用することが求められていますが、木造は建築時において炭素の排出量が少なく、また木は炭素を固定し貯蔵する特性がある事から、脱炭素社会実現に向けて大規模木造建築物の普及を推進する大きな要素になると思われます。今後も注目していきたいと思います。