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2025/10/10 |  社員ブログ

私の建築観について

皆様、いつも有難うご ざいます。 私は豊和開発株式会社の香川清和と申します。
私は、これまで建築設計事務所で意匠設計の業務を約20年間、それから医科大学の総務部において施設整備業務としてのファシリティマネージメントを約20年間、経験してまいりました。今は縁があって当社にお世話になることになりましたので、これからよろしくお願い申し上げます。尚、本コラムでは、現在、日々、私なりに自問自答している 「私の建築観」 を簡単に述べたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.古代からの建築の三要素について

建築は、古代ローマ時代にウィトルウィウスが、建築書において制作(つくられるもの)と理論(つくるもの)が必要と記述しています。建築物に求められる三要素として、「機能性」、 「耐久性」、 「美観」を提唱しています。「機能性」とは使用する時に欠陥がなく、支障がないことを意味するとのことであります。「耐久性」とは、堅固であることを意味しているとのことであります。「美」とは、外観が快く典雅であり、建物における全体および部分的に人体図のようにバランスが良く比率的な配列で構成されているとのことであります。建築物は、この三要素のすべてを兼ね備えていることが求められ、芸術面と科学面の両方を考慮する必要があるとしています。彼が古代ローマ建築にどのような影響を与えたかは定かではありませんが、その後の建築家には影響を与えていると言われています。

2.ヒューマニズム

まだ私が若くて暗中模索で建築に取り組んでいる時に感銘を受けた言葉があります。法隆寺の宮大工である故西岡常一棟梁にお会いして、法隆寺の五重塔を一緒に観ながら「この建物は柱と梁で構成されていますが、建立した当時の大工の棟梁は、人と人を組み上げたのだよ。」と言われて、それが今でも心に深く突き刺さっています。当時の棟梁は、腕の立つ大工たちをまとめ上げた人格の持ち主である方だからこそ、法隆寺は今まで修理を繰り返しながらも、代々引き継がれてこられた建築物だと思います。当時の棟梁は「ヒューマニズム」があふれる豊かな「人間性」の持ち主であったのだと思われます。

3.建築の五要素

建築は18世紀ごろから加速する科学技術の発展により、装飾的な部分よ りも科学的知識を応用した実用性が圧倒的に意味を持つようになってきました。その後は、「経済性」が重い比重で求められる時代になっています。現在の建築活動においては、「機能性」、「耐久性」、「美観」、「経済性」の四要素を念頭に置いたうえで、クライアントの承認を得るためのデザインを創造することが、私達にとっては大切な役目になっていると思っています。そのために、私達は最適解を選出して、建築物を創造するのですが、まず最初に前述による四要素を基にして企画・構想を行い、設計し、施工します。建築は、このようなプロセスの中で人と人とのコミュニケーションから創造されてくるものであるからこそ、技量だけでなく、コミュニケーション能力を備えた「人間性」を持ち備えていることが重要なキーワードになると私は思っています。「機能性」、「耐久性」、「美観」、「経済性」、「人間性」が建築の重要な「五要素」となります。ところが、近代において巨大な高層建物が林立する時代となり、これは「経済性」の結果ではあるのでしょうが、私は残念ながら「人間性」としてのヒューマンスケールを薄くて感じにくいところがあります。このことを全面的に否定をするつもりはありませんが、私はどのようにすれば「人間性」を感じるタワーマンションが建築できるのか疑問を抱いています。果たして、タワーマンションは将来「人間性」を豊かにすることができるのでしょうか。それは、人によっては受け取り方がいろいろとあると思っていますが。

4.まとめ

私が建築に取り組むために大切にしていきたいと思う建築における「五要素」を申し上げましたが、その中でも特に「人間性」は、人によって異なり、各々個別に特性を有しています。建築物を創造する時には、この「人間性」が大きく影響することにより、他の四要素を支配すると私は思っています。合理主義だけの建築物はつまらないと思います。「人間性」が反映されていなければ、人々に共感を伝えられないと思います。よって私は、建築とは「ヒューマニズム」が最も重要な要素になると思います。与えられた条件でしか勝負するしかなく、自分の中からしか答えが出せないことが現実であり、建築とはそういうものであるかもしれませんが、建築物は人が利用するものですから、人の心に訴える「美」が必要であると思います。「居・食・住」として人の生活と密接に関わる建築物ゆえに「ヒューマニズム」を感じるものでなければならないと思います。人々を満足させるには、それなりに他人に共感を感じさせるものがなければなりません。つまり、自分をアピールして表現しただけでは人々の共感は得られないと思います。例えば、設計するときに建物は、立面図で外観を表現しますが、スケールの大きな建物になると、人の視線レベルで美しさを検討しなければならないと思います。普段、人々は各自の視線レベルで建築物を視ているのですから、建築物の外観はヒューマンスケールにて常に判断されていると思います。たとえ2次元的な立面図や透視図による形状が美しく見えても、完成した建物を人の視線レベルで観た時の印象は変わってきます。極端ですが、平面図では直角であっても、実際の建物を見れば鋭角に見えるかもしれません。建築における「美」とは、人間が原点であることを感じられることが建築のもっている面白さではないでしょうか。私は、今、人生の道において中半から後半に向けて歩み出しています。これからも夢を抱き続けて人生の道を歩んで行く所存ですので、皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。最後にヘーゲルが唱えていたように、私自身も「己を知って、己を無にすることで、己を超える」こと、それが「私の建築観」の到達点であるように思っています。