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2022/09/02 |  社員ブログ

意外と奥深い、杭工事における土の存在

こんにちは。私は豊和開発株式会社の設計監理部で意匠設計、設計監理を担当している小浦です。

 

私は普段、建築物の設計監理業務を担当しています。施設建築の為の基本設計、実施設計、確認申請までを終えるとついに、現場が着工を迎えます。

 

そしてまずはじめに行うのは、建物を地盤から支える為の杭工事です。先だって、その杭工事に必要な試験杭の立ち合いの為、現場に行きました。試験杭とは、杭底の土の部分、支持層の状態を確認する作業です。杭底の土を採取し、事前に行った地質調査の土のサンプルと比較、同じ土が採取できたかどうかを確認します。その現場ではサンプルと同じ土が杭底から採取でき、一安心しました。

 

そこで、今回は杭工事における土との関連性についてお話したいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.杭の種類について

まずは杭工事に使用する杭の種類をご紹介します。

 

杭を分類するならば,工場で作った杭を現場に埋め込む「既製杭」と杭を現場で作る場所打ち「コンクリート杭」があります。それとは別に,建築物を支持する方法の違いでも分類されます。

 

杭先端の強固な地盤による反力で支持する「支持杭」、杭先端は強固な地盤に到達していないが,杭の周面の摩擦力で支持する「摩擦杭」があります。

 

余談ではありますが、昔は松の木を素材とした「松杭」が良く使われました。かつて靭公園の南側で工事をした際、建物の地下から松杭が出てきました。昔、靭公園の南側は川でしたが地中の松杭は全く腐っていませんでした。

東京駅の下にも1万本の松杭が打ち込まれていたなんて有名な話もあります。

2.気が遠くなる...ダンプカーの台数問題

今回は場所打ちコンクリート杭(支持杭)についての現場での土のお話します。

 

コンクリート杭を打ち込むには、まず杭の為の穴を掘るのですが、当然土が出ます。設計図には穴の大きさと深さが記載されており、そこから場外に運び出す土の量が計算されます。

そしてその土の量で工事に必要なダンプカーの台数が決まります。そして、ダンプカーは1台につき8tまで土を積むことができ、車体重量の2tを加えて10t車と呼ばれています。杭穴の直径と深さで体積を割り出して必要な10t車の台数を計算するのですが、実はそう簡単に計算できないのが土の奥深いところです。

 

実際土8tとは体積にして何㎥なのでしょうか。資料によると、土1㎥あたり1.4t~2.0tとなります。数値に幅があるのは土の種類で重さが違う為です。(砂は重く、粘土は少し軽いのです。)掘り出された土の重さと体積で、ダンプカーの台数が求められますが、実はこれだけで計算は終わりません。

 

土は地面の中から掘り出すと体積が膨れ上がります。地中で1.0㎥だった土が地上では1.2㎥~1.3㎥にも膨れ上がります。そしてここでも土の種類によって違いがあります。(粘土は小さく膨れ、砂は大きく膨れます)土の中では同じ量でも地上では、土の種類によって重さと体積が全く変わってしまいます。しかし、それを含めて計算してもまだ、土を運び出すダンプカーを呼ぶことが出来ません。

 

実は土は地中でいろんな種類の層となっています。深さによって出てくる土の種類が違うのです。土の種類によって掘りだす量の増える割合が変わりますから、そのことも考慮しなければなりません。

 

そして更にまだ考える事があります。

3.忘れてはならない水という存在

それは水の存在です。

 

水を含んでいるのと、いないのとで土の重さは変わります。

粘土は元々水含んでいてあまり重さは変わりませんが、砂は水を含んでいると重くなります。地中の層ではそれぞれ土の種類や含んでいる水の量の違いをそれぞれ考えて計算しなければなりません。また水を含んでいると膨れる大きさは小さくなり、含んでいないと膨れる大きさは大きくなるといった違いがあります。

私たちは地下にある状態の土を地上に出すと体積がどう変化するかを想像しなければならないのです。

 

更に考えることがありまます。それは土を掘り出す日の近々の天候です。近々が雨の日と晴れの日で土に含まれる水の量も変わります。地下水の量も変わります。そして、作業の当日の天候も勿論忘れてはなりません。雨が降れば、水を含んだ土は重くなってしまいます。

 

ここまでお話したことを全て考え抜いた上で杭の為に掘り出した土を運び出すのです。

 

土を考えることは、自然との闘いといえます。そして天候は毎日変わる為、毎日どう計算するかを想像する必要があります。

 

土を考えることは、想像と計算から始まるのです。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

ただ単に土といってもここまで考える事があるのは意外に感じられたのではないでしょうか?

杭の為の穴を掘る作業だけで、様々な自然現象を考えなければなりません。図面の数値とは違うことを沢山考えた上で計算が必要になってきます。

そして各建設現場で毎回違うことを考えなければなりません。

 

土ひとつとってもこれだけのことを考えるのですから、工事が進むごとに様々な計算が必要になります。

建築とは自然を考え、計算し数値に置き換えることでもあります。そこに建築の面白みがあります。建築は数字との戦いであり、戦いとは数字と友達になって数字を理解することです。設計図然り、現場での作業然り 数字が氾濫しています。建築をしていると自然が好きになり数字が好きになり計算が好きになる方も多いのではないかと思います。

 

杭工事の後の工事として、鉄筋を入れ、コンクリートを流し込む作業がありますので次回以降お話させて頂きます。

また自然と数値のデザインについてもいつかお話させて頂きますので是非お楽しみに。