豊和開発 土地活用に
グッドアイデア

- コラム -
COLUMN

HOME › コラム › 建築環境総合性能評価システム:CASBEE

2020/03/27 |  社員ブログ

建築環境総合性能評価システム:CASBEE

近年、地球温暖化は国際的に深刻な問題となっており、毎年猛暑・暖冬などの異常気象が世界中で続いています。普段の生活においても省エネルギー化の動きが高まっています。そのような動きの中、建築物においても省エネルギー化や環境負荷の少ない資機材の使用といった環境への配慮が求められています。環境配慮がなされた建築物を増やしていく為には、その建築物の性能を評価・認証・表示を行い、共有することが重要とされております。建築物を評価するツールとして開発されたものの中に「建築環境総合性評価システム」“CASBEE”があります。今回のコラムではこのCASBEEについてご紹介します

- 目次 -
CONTENTS

1.CASBEEとは

建築環境総合性能評価システム”CASBEE”(=Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)は、建物の環境性能を評価するシステムであり、2001年に国土交通省主導のもと開発されました。評価対象は建築物から都市まで幅広く、戸建(新築・既存)に対しては「住宅」、戸建て以外の建築物に対しては「建築」、都市の開発プロジェクトに対しては「街区」、都市の環境性能に対しては「都市」の4つのカテゴリーにわかれています。一部の自治体では、一定規模以上の建築物を建てる際に環境計画書の提出を義務づけられており、その届出の添付資料としてCASBEEによる評価書を採用しています。
評価結果は1枚のスコアシートに5段階評価で表示され、評価に適用される採点基準は評価時点での技術的、社会的なレベルを考慮して決定されます。また、自治体で使用されるものは、各自治体の地域性や政策等を鑑み、一部修正を施したものとなっており、より地域の実態を反映したものとなっています。

2.4つの評価ツール

建築物を評価する際には、建築物のライフサイクルに合わせた「企画」「新築」「既存」「改修」の4つのカテゴリーのうち、対象物件に合ったものを選択します。また、それらのカテゴリーには目的とターゲットユーザーが設定されており、評価対象とする様々な建物の用途(事務所、学校、集合住宅等)に対応できます。
私は大阪府堺市で延べ面積5,500㎡程の老人介護施設の新築計画に携わらせていただいており、その堺市では延べ面積2,000㎡以上でCASBEEの届出義務があるため今回このシステムを使用することとなりました。私が携わった老人介護施設等、住宅以外の建物の場合、該当するカテゴリーは「新築」となります。このカテゴリーでは建物の設計段階で目標性能または設計仕様、予測性能に基づいて自己評価を行い、その評価を用いて各段階での改善検討などが可能です。この時の評価結果は、一部の建築物で第三者(CASBEE評価認証機関)の認証を得た上で建築中現場や竣工後の物件に表示することが義務化されています。

3.評価項目について

採点基準に従って採点された建築物は、より良い環境品質をより少ない環境負荷で実現しているものが高い評価を受けます。その評価をCASBEEの中ではBEE値(環境効率)と呼び、以下の計算式で求められます。
 
 式:BEE値=Q(Quality:環境品質)÷L(Load:環境負荷)

「環境品質」が大きく「環境負荷」が小さい、つまりBEE値が高い建物ほど環境性能が良い建物であるということです。
「環境品質」は音環境や温熱環境、機能性といった項目があり、それに対して「環境負荷」は自然エネルギーの利用や水資源保護といった項目があります。それらの項目を合わせるとおよそ90項目になります。

4.まとめ

建築環境総合性能評価システム”CASBEE”についてご紹介させて頂きました。CASBEEは日本独自のツールですが、同じように建築物の環境性能を評価するツールは世界中にあり、イギリス・カナダ・アメリカなどでは既に実用化されております。しかし日本ではこの制度を設けてからの日が浅く、また広報活動などもあまり広く行われていない為、世界と比較しても認知度はあまり高いとはいえません。CASBEEの提出を義務化している自治体も、現在公開されている情報では全国で24にとどまっています。私自身も実際にこのシステムを使用するまでは知りませんでした。しかしCASBEEがより運用されることは環境性能の高い建築物が増えることに繋がり、CO2削減や大気汚染緩和のような環境向上にも繋がるので、より普及すると良いと感じました。

【設計監理部 大谷茉穂】