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2026/10/30 |  社員ブログ

ライティングデザインの重要性

建築において、光は単に空間を明るくするためのものではありません。人が空間をどのように感じ、行動し、どのような時間を過ごすのかに深く関わる重要な設計要素です。自然光の取り入れ方や人工照明の配置、光の色や強さによって、同じ空間であっても印象や居心地は大きく変化します。

前回のコラムでは、色彩とテクスチャー(素材感)に着目し、安心・識別・調和という視点からカラーマネージメントの重要性を考察しました。色彩や素材の魅力を引き出すためには、それらを照らす光の存在が欠かせません。光は色の見え方を変え、素材の質感を際立たせ、空間に奥行きや表情を与えます。

特に介護施設や保育施設のように、多様な年齢や特性を持つ人々が日常を過ごす建築では、意匠性だけでなく安全性や快適性への配慮が求められます。本稿では「光」「安心」「調和」の3つのキーワードを軸に、ライティングデザインの重要性を4つの視点から考えます。

- 目次 -
CONTENTS

1.光がつくる空間の表情

光は、空間の広がりや奥行き、そこに漂う雰囲気を形づくります。室内全体を均一に照らすと明るく見通しのよい空間になります。一方、壁面や天井を照らしたり、必要な場所に光を集めたりすると陰影が生まれ、落ち着きや奥行きを感じさせることができます。

自然光は時間や天候によって変化し、室内に豊かな表情をもたらします。窓の位置や大きさ、庇の形状などを工夫して自然光を適切に取り入れることは、建築計画そのものに関わる重要なテーマです。人工照明についても、器具の選定だけでなく、光の方向や広がり、壁や天井への反射まで考慮することで、空間全体の質を高められます。

大切なのは明るさの量だけでなく、光をどのように配置し、どのような印象を生み出すかという視点です。ライティングデザインは、空間に表情を与え、その場所らしさを引き出す役割を担っています。

2.安心と快適性を支える光

介護施設や保育施設では、利用者が安心して過ごせる環境を整えることが照明計画の基本です。移動や食事、読書、遊びなど、それぞれの活動に適した明るさを確保するとともに、まぶしさや極端な明暗差を抑え、無理なく周囲を認識できる環境をつくることが重要です。

高齢者は加齢に伴って視機能が変化し、見えにくさを感じる場合があります。そのため、単純に照度を高めるだけでなく、光源が直接目に入らない配置や、床・壁・建具などの適切な明度差にも配慮する必要があります。手すりや段差、出入口などを認識しやすくすることも、安心、かつ安全な生活を支える工夫の一つです。

保育施設では、活発に活動する場所と落ち着いて過ごす場所とで、照明のあり方を使い分けることが考えられます。自然光を取り入れ、日中の明るさの変化を感じられる環境は、時間の流れを意識しながら生活するうえでも役立ちます。一人ひとりの特性と空間の用途を理解し、必要な機能と心地よさを両立させることが設計者に求められます。

3.色彩・素材と光の調和

光と色彩、素材は互いに影響し合いながら空間の印象をつくり出します。同じ色の壁であっても、自然光と人工照明では見え方が異なり、照明の色味や当たり方によって、温かくも冷たくも感じられます。

例えば、木材の壁面に光を斜めから当てると、木目や凹凸が際立ち、素材本来の風合いが感じられます。一方、光を均一に広げることで、素材の表情を穏やかに見せることもできます。光沢のある仕上げでは反射や映り込みに注意し、マットな素材では柔らかな陰影を生かすなど、仕上げの特性に応じた照明計画が必要です。

これは前回取り上げたカラーマネージメントとも密接につながっています。色彩や素材を個別に選定するだけでなく、実際にどのような光の下で見えるのかまで想定することで、設計段階で意図した空間のイメージをより確実に実現できます。色・素材・光を一体として捉え、互いの魅力を引き出すことが、統一感のある豊かな空間を生み出す重要な視点です。

4.建築コンセプトを光で具現化する

光の役割を建築全体の方向性と結びつけるうえで重要となるのが、コンセプトワークです。施設が何を大切にし、利用者にどのような時間を過ごしてほしいのか。その考え方によって、ふさわしい光のあり方も変わります。
例えば、「家庭的なぬくもり」を目指す施設であれば、柔らかな光や木質素材の風合いを生かす照明が考えられます。「活動性や交流」を重視する空間では、必要な明るさを確保しながら、人が集まる場所に視線を導く光の使い方が有効です。静かに過ごす場所では、まぶしさを抑え、落ち着いて滞在できる光環境が求められます。

ライティングデザインは、照明器具を選ぶだけの作業ではありません。建築のコンセプトを理解し、色彩や素材、空間構成、利用者の行動と結びつけながら、光によって設計思想を具体化する行為です。私たちは、建築の形や仕上げを整えることに加え、その空間で人が何を感じ、どのように過ごすのかまで考える必要があります。

今後もコンセプトワークを出発点に、色彩・素材・光を一体として捉え、人に寄り添う空間づくりを追求していきます。そして、機能性と美しさを備え、調和の取れた、長く愛される建築を丁寧に形にしていきたいと考えています。