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2026/04/03 |  社員ブログ

省エネ基準適合義務化による設計環境の変化

2025年4月より、原則すべての新築建築物に対して省エネルギー基準適合が義務化されました。これにより、建物には一定の省エネルギー性能を満たすことが求められるようになり、設計業務における重要な前提条件の一つとなっています。
背景には、地球温暖化対策やエネルギー消費削減の必要性の高まりがあり、建築分野においてもその対応が強く求められています。こうした流れの中で、省エネルギー性能は建物の基本性能の一つとして位置付けられるようになっています。
本稿では、省エネルギー基準適合義務化の概要とともに、実務における変化や今後の設計業務のあり方について考えていきます。

- 目次 -
CONTENTS

1.省エネルギー基準適合義務化とは

省エネルギー基準とは、建物のエネルギー消費を抑えるための基準であり、大きく分けて「建物の断熱性能」と「設備によるエネルギー消費量」の2つの観点から評価されます。前者は、外気の影響を受けにくくすることで冷暖房の効率を高めるものであり、壁や屋根の断熱性能、窓の性能などが関係します。後者は、空調・換気・給湯・照明といった設備機器の効率や使い方によって決まるもので、建物全体のエネルギー使用量に影響します。これらの性能を高めることにより、エネルギー消費量の削減だけでなく、二酸化炭素排出量の削減にもつながり、地球環境への負荷低減に寄与します。また、室内の温熱環境が安定することで、利用者にとって快適で過ごしやすい空間づくりにもつながります。
近年では、建築分野におけるエネルギー消費の削減が重要な課題とされており、省エネルギー基準への対応はその中核を担う取り組みの一つと位置付けられています。これらを総合的に評価し、基準を満たすことが求められるため、建物と設備を一体として考えることが重要となります。

2.設計初期から求められる総合的な検討

実務においても、省エネルギー適合性判定やそれに伴う質疑対応が増え、図面や計算書の整合性をこれまで以上に求められる場面が増えています。また、義務化の影響により審査件数が増加していることから、審査機関の混雑や回答までの期間の長期化を感じる場面もあり、スケジュール調整の重要性も高まっています。
特に、質疑対応の回数や内容によっては想定以上に時間を要するケースもあり、全体工程に影響を及ぼす可能性があるため、余裕を持ったスケジュール設定が必要となっています。
このような状況の中で、設計においてはこれまで以上に初期段階からの検討が重要となっています。建物と設備は相互に影響し合うため、後工程での調整では対応しきれないケースも多く、計画段階から全体を見据えた設計が求められています。

3.省エネルギー基準と今後の動向

省エネルギー基準は、建物の断熱性能を示す外皮性能と、空調・換気・給湯・照明などを含めた一次エネルギー消費量の両面から評価されます。これらはそれぞれ独立したものではなく、建物計画と設備計画が相互に影響し合う関係にあります。
特に一次エネルギー消費量については、BEI(Building Energy Index)という指標によって評価され、基準値を下回ることが求められます。
近年は、この基準について段階的な見直しが進められており、2026年度に向けては中規模建築物における基準の見直しが示されています。これにより、従来と同様の設計手法では基準を満たすことが難しくなることも想定されます。
さらに、国の方針としては2030年に向けてZEH水準への引き上げが示されており、今後も継続的に性能向上が求められていく見込みです。こうした動向を踏まえると、将来を見据えた設計の重要性はますます高まっていくと考えられます。

4.これからの設計に求められること

省エネルギー基準適合義務化により、設計業務は大きな転換期を迎えています。これまでは基準を満たすこと自体が一つの目標でしたが、今後はその先にある建物の性能や利用者の快適性までを見据えた設計が求められます。
特に、建物と設備を一体として捉える視点はこれまで以上に重要となります。断熱性能や開口部計画といった建築的な要素と、空調・換気・給湯・照明といった設備的な要素は相互に影響し合うため、部分最適ではなく全体最適の考え方が必要になります。
また、基準を満たすための検討が増える中で、その内容を正確に伝えることの重要性も高まっています。図面や計算書の整合性を確保し、関係者に意図を分かりやすく共有することが、円滑な設計・施工につながります。
当社が多く手がける保育園や有料老人ホームにおいては、利用者の特性上、室内環境の安定性が特に重要となります。省エネルギー性能の確保は、エネルギー削減だけでなく、快適で安心できる空間づくりにも直結します。
今後は、省エネルギーを前提とした設計を早い段階から組み込み、将来の基準強化も見据えた計画を行うことが重要になります。制度への対応にとどまらず、設計の質そのものを高めていくことが、これからの設計者に求められていると感じています。