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2026/05/22 |  社員ブログ

領収書について

こんにちは。豊和開発株式会社で主に経理を担当している村上です。
皆様が毎日、当たり前のように目にしている「領収書」
実は、この領収書、その歴史を紐解くと、単なる「支払いの証明書」以上の、人類の知恵と文明の進化が詰まった非常に興味深い存在なのです。本日は、経理担当者にとっても馴染みの深い領収書について取り上げたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.領収書の変遷

領収書の歴史は、驚くほど古くまで遡ります。紙が発明されるよりずっと前、古代メソポタミア文明(紀元前2050年頃)の時代には、すでに領収書の原型が存在していることが分かっています。
「アリルのビール領収書」と呼ばれているものもその一つで、「醸造者アリルが最高品質のビールをウル・アンマに納品した」という内容が粘土板に楔形文字で刻まれています。
メソポタミア文明では、湿った粘土板に葦(あし)の棒で取引内容を刻み、太陽の光で乾かして保存していました。
つまり4000年前から「いつ、誰に、何を渡したか」という会計記録を残していたということです。
そして、中世に入ると、地中海貿易の発展とともに取引が複雑化します。複雑化した取引を記録するために生まれたのが以前、取り上げた「複式簿記」です。
15世紀、イタリアの数学者ルカ・パチョーリが複式簿記を体系化しましたが、この頃から「支払いを受けたことを証明する書面」の重要性が飛躍的に高まりました。金貨や銀貨がやり取りされる取引において、二重支払いを防ぐための自己防衛策として、領収書が商人の間で不可欠なツールとなっていました。なお、当時の領収書は、羊皮紙や初期の紙に、羽根ペンで署名し、ロウで封印(封蝋)を施すといった、非常に重厚な「契約書」に近いものでした。

2.日本での領収書

では、日本ではどうだったか見ていきたいと思います。
江戸時代、日本の商習慣は世界的に見ても非常に高度なレベルにありました。
当時、商家では、現代のレシートのような端切れではなく、「通帳(かよいちょう)」という帳面が使われていました。酒屋や米屋に買い物に行くと、その帳面に金額が記され、ツケ払い(掛け売り)の記録となります。そして代金を支払った際に、店側がその記録を消したり、判子を押したりすることで、領収の証明としていたのです。
そして、20世紀頃になると、ビジネスのスピードが加速します。ここで大きな転換点となったのが明治時代後半に輸入され、「炭酸紙」と呼ばれていた「カーボン紙」の登場です。
それまでは、同じ内容を2回書くか、台帳に書き写す必要があり、領収書の作成は手間のかかる作業でしたが、カーボン紙の登場によって「控え」と「正本」を一度に作成できるようになりました。これは経理事務における革命でした。

3.電子帳簿保存法と「データの時代」へ

領収書の誕生から数千年を経た現在、領収書は、さらに大きな転換点に立っています。それが「領収書のデジタル化(電子領収書)」です。
令和6年1月からの電子取引データの保存完全義務化により、メールで届いたPDFの領収書、Webサイトのダウンロード機能を用いて、インターネット上で取引を完結させるペーパーレスな領収書は、「印刷して紙で保存する」ことが原則として認められなくなりました。これらの領収書は、「データのまま」、法律で定められたルール【真実性の確保】と【可視性の確保】に従って保存する必要があります。
・真実性の確保: 改ざんを防ぐため、タイムスタンプの付与や、訂正削除の履歴が残るシステム(クラウド経理ソフトなど)の利用、あるいは訂正や削除の防止に関する事務処理規定を定め、それに沿った運用を行う。
・可視性の確保: 「日付・金額・取引先」で検索できるようにし、いつでも画面ですぐに確認できる状態にしておく。
一方で、従来通り紙で受け取った領収書は、そのまま紙で保存するのが原則ですが、希望すればスキャナーで読み取りデータ化する「スキャナー保存」が認められています。
領収書をデジタル化することにより、紙の原本をすぐに廃棄できるようになり、ペーパーレス化と保管コストの削減を同時に進めることが可能になっています。
領収書を電子で発行するメリットは、それ以外にもあります。紙の領収書を発行する場合、取引金額が5万円以上になると印紙税の支払いが必要となります。これは、紙の領収書が印紙税法上、「第17号文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)」に該当するためです。それに対し、領収書を紙ではなく電子で発行する場合は、電子データとして扱われることになり、印紙税の対象外となることから印紙税の支払いが不要となります。
このように領収書を紙ではなく、電子で発行することで、さまざまなメリットを享受できます。
しかし、デメリットとして、電子領収書を発行する側も受け取る側も従来の業務フローが大きく変わるため、社内体制の見直しが不可欠となる点に注意が必要です。
電子領収書を発行する側はどのように発行するのか、発行後はどのように管理するのか発行のルールを明確化する必要があります。
受領する側も、電子領収書をどのように管理していくかのルールを明確にする必要が出てきます。電子領収書の保存要件を満たすためには、適切なフォーマットでの保存や、一定期間のデータ保持が必要となるためです。
電子領収書にはさまざまなメリットがありますが、電子領収書に対応したソフトウェアやシステムを導入するコストがかかること、社内体制の見直しが不可欠であることには留意が必要です。

4.最後に

かつて粘土板だった領収書は、紙になり、カーボンコピーになり、今や「電子データ」へと姿を変えようとしています。しかし、その本質は、メソポタミア時代の粘土板と同じです。それは、「取引の信頼を担保し、不正を防ぐ」ということです。
お金を払う人と受け取る人をつなぐ、信頼のバトン。それが領収書です。歴史が移り変わっても、そこに込められた重みは今も昔も変わりません。
領収書を扱う際には、そのことを忘れず、誠実かつ正確な会計処理を続けていきたいと思います。