豊和開発 土地活用に
グッドアイデア

- コラム -
COLUMN

HOME › コラム › 月面に描く“未来の都市”――はじまりの構想

2026/04/17 |  社員ブログ

月面に描く“未来の都市”――はじまりの構想

人類が地球の隣接天体・月に都市を築く夢は、長年にわたりSFや理論研究の題材でした。昨今、民間宇宙企業の台頭や国際協力の進展により、単なる夢から“現実に近い計画”へと変貌しつつあります。都市計画の基本構造や建築の方向性をどう定義するかは、物理的環境だけでなく、人間の心理・文化・社会的ニーズとも深く結びつきます。本コラムでは、月面都市計画に関わる構想・課題・解へのアプローチを整理し、その建築デザインにおける未来展望を様々な資料を元に描いてみたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.~基盤づくり~

月には“地球のような環境”がありません。極端な温度変化(昼間は約+120°C、夜間は約−170°C)、真空、大気ゼロ、宇宙線や微小隕石の脅威といった厳しい条件です。そこでまずはコア基盤の整備が重要となります。
1.選地:南極域や長期間影が差す“永久影クレーター”は、氷資源の確保に有利です。一方、赤道近くの“光照度安定域”はソーラー発電の効率が高まります。両者をどう組み合わせるかが都市の設計出発点となります。
2.ドーム構造の採用:内部に気圧・酸素・温度・放射線シールドを供与するドーム型空間は有力な選択肢。地上では耐久性や荷重に対する素材選定が課題となり、軽量・高強度・遮熱性・遮放射性に優れた構造体設計が求められます。
3.インフラ:エネルギーは太陽光パネル中心+蓄電に水・氷を活用する複合型。通信は直接地球中心のアンテナか、月軌道上リレー衛星が想定されます。また、水資源の抽出・貯蔵・リサイクル施設、空気生成・再循環システム、食料生産施設(植物工場等)など生活に不可欠な機能を別棟のモジュールとして配置し、各モジュール間を気密トンネル等で連結させる設計が基本構成です。

2.~建築計画~

○素材選びと住空間設計
地球上で当たり前のコンクリート、木材、ガラスなどは月面では運搬コストが莫大です。そのため、《月の資源=レゴリス(土壌)》を活用する「現地資源利用(ISRU: in situ resource utilization)」が鍵となります。
•3Dプリンターによるレゴリス造形:実験では半球形やチューブ形などの構造の実証が進んでおり、資源転用の夢が一歩ずつ現実に。
•バーガーストラクチャー(地土材被覆ドーム):膨張式内部膜の上にレゴリスを担保し、放射線・温度変化・微小隕石対策を兼用させた構造設計が提案されています。
•内部施設の整備:居住区、研究区、レジャーゾーン(娯楽・観光)、農業区など用途別にゾーニング。各ドームやモジュールを接続させたハブ構造が交通の起点となります。また、重力が地球の1/6という特殊環境下での生活動線設計、床衝撃や高所活動などに配慮したインテリア設計が都市建築の核です。

○気候適応と持続可能性デザイン
月面の極昼・極夜に対応する設計は、以下のような建築思想が必要です。
1.最高・最低温度への対応:高断熱材と多層構造、放射線遮蔽材の併用で室温を人間に最適化。
2.放射線・宇宙粒子対策:レゴリス厚20〜30cm相当で有害線量を削減するとされ、さらに内部林や水タンクを遮蔽材として活用する「自然のシールド」戦術が期待されます。
3.通風・換気と気圧維持:気密設計された膜・ドーム下に空気管理プラントを設置。植物工房を活用してCO₂吸収・酸素生成の自然循環を取り入れます。
4.エネルギーマネジメント:昼間の太陽光利用が中心ですが、極夜に備えて蓄電、あるいは原子力ミニリアクター(小型炉)導入構想もあります。エネルギー獲得・配分は都市運営の中枢です。

3.~社会設計~

○コミュニティ形成
月面都市は単なる“人が住むハコ”ではなく、そこに暮らす人々の“社会の場”であるべきです。以下の要素が都市設計と絡み合います。
•多世代混住・多国籍化の共生:国際共同プロジェクトが進行中。多様な文化・価値観が交差するコミュニティ運営が求められます。
•公園・緑化空間:ドーム内やトンネル部に植物が密生する緑地を設けることで、精神の安定・空気浄化・生産性向上が期待されます。
•娯楽・文化施設:シアター、スポーツゾーン、イベント広場などを配置。極限環境での心の健康維持に重要です。
•教育・研究拠点化:月面地質、天体観測、医療・生命科学研究などを担う施設群を配置し、地球や他惑星への展開への知見を得られる実験都市として運営します。
○”都市”の根本的意義
都市とは単なる機能的構造ではなく、「文化・コミュニティ・アイデンティティの集積地」です。月面都市も例外ではありません。都市設計は、人間が集まり、創造し、未来を夢見る場を支える空間構造も担います。
•建築デザインがもたらす心理的安心感:有機的な曲線や光の演出、自然模倣デザイン(バイオミミクリー)などで、極限空間でも“我が家感”を支えます。
•時間と変化への対応:ドームへの人工照明や光環境制御で“昼‐夜感”を演出し、生体リズムを安定させやすい環境を整えます。
•持続可能な進化する都市:段階的拡張モジュール構造とすることで、人口増・機能追加に応じてソフト・ハードともに拡張可能な都市設計が求められます。

4.~まとめ~

月面都市は地球都市の“根本的な再設計”とも言えます。環境への順応、人間らしさの維持、国際協調社会の実験場――そのすべてに建築的視点は不可欠です。
現地資源を材料に、機能と感性を兼ね備え、持続可能なコミュニティを育む。これこそが月面都市計画における建築の真髄ではないでしょうか。
今後は、モデル居住モジュールの試作・月面での実証実験が本格化し、具体的な都市設計図や建築仕様の策定へと着実に進んでいくでしょう。“月の街”は、地球を越えた建築の新たなフロンティアです。