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2026/07/10 |  社員ブログ

台湾旅行で感じた「気候がつくる建築」

先日、休暇を利用して台湾を訪れる機会がありました。台湾は日本から比較的近く、グルメや観光地のイメージを持つ方も多いと思います。建築設計に携わる者として、現地では自然と街並みや建物に目が向きました。海外の街を歩いていると、日本では当たり前だと思っていた建築や都市のあり方が、決して世界共通ではないことに気付かされます。その土地の気候や文化、歴史、生活様式によって街並みは大きく変化し、それぞれの地域に適した建築が形成されています。台湾で見聞きした建築の特徴や、建築設計の視点から感じたことについてお伝えしたいと思います。

- 目次 -
CONTENTS

1.台湾の街並みで見られる「騎楼」

台湾の市街地を歩いていると、建物の1階部分が道路側から後退し、その上に2階以上の部分が張り出している建物が数多く見られます。この1階部分にできた半屋外空間を「騎楼」と呼びます。騎楼の下は歩道として利用されており、店舗が並ぶエリアでは建物ごとの騎楼が連続することで、まるでアーケードのような空間が形成されています。日本にも商店街のアーケードはありますが、それらは後から屋根を設置したものが多く、建物本体とは別の構造です。一方で騎楼は建築物そのものの一部として計画されており、街並みの中に自然に組み込まれている点が大きな特徴です。実際に歩いてみると、建物から建物へと途切れることなく移動できるため、非常に快適に感じました。私が訪れた際も、店舗の前には商品が並び、多くの人々が行き交うなど、街の活気を肌で感じることができました。また、騎楼は単なる通路としての役割だけでなく、人々の暮らしや商業活動を支える重要な公共空間として機能しています。建築と街、人々の生活が一体となっている様子は、日本ではあまり見ることのない光景であり、非常に印象的でした。

2.気候が生み出した建築の工夫

台湾は年間を通して高温多湿な気候であり、日本と同様に台風の影響を受ける地域でもあります。私が訪れた際も、突然雨が降ることがあり、雨が止んだ後は湿度が非常に高く、日本の夏以上に蒸し暑さを感じました。
そのような環境の中で街を歩いていると、騎楼が人々の暮らしを支えるための合理的な建築であることを実感しました。実際に雨が降った際には、騎楼の下を通ることで雨を避けながら移動することができ、傘を差さずに歩ける区間も多くありました。また、強い日差しが照りつける時間帯でも、騎楼がつくる日陰によって快適に歩くことができます。
日本でも軒や庇によって雨や日差しを防ぐ工夫が見られますが、台湾の騎楼はそれらを街全体で連続的に形成している点が特徴的です。建物単体の工夫にとどまらず、街並み全体として歩行者の快適性を高めていることに興味を惹かれました。建築設計では、デザインや機能性だけでなく、その土地の気候や環境を考慮することが重要です。台湾の騎楼は、高温多湿な気候の中で人々が快適に暮らすために生まれ、現在も街の一部として活用され続けています。
実際に現地を歩いたことで、建築は単に建物をつくるだけではなく、その土地の気候や生活様式に適応しながら、人々の暮らしを支える役割を担っていることを改めて感じることができました。

3.台湾と日本の建築文化の違い

台湾の騎楼を見ていると、日本の伝統建築との共通点も感じました。
例えば、日本の古民家には「縁側」や「深い軒」が設けられています。これらは夏の日差しを遮り、雨を防ぎながら風を取り込むための工夫です。現代の建築ではデザイン性や敷地条件などの影響から見られる機会が少なくなりましたが、日本にも気候に適応した建築文化が存在しています。台湾の騎楼も同様に、その土地の気候や生活様式から生まれた建築です。高温多湿な気候や突然の雨に対応するために発展し、現在でも人々の暮らしを支える重要な空間として機能しています。また、騎楼以外にも、台湾の街並みには日本とは異なる特徴が数多く見られました。特に印象的だったのは、建物と街との距離の近さです。1階部分には飲食店や物販店舗が並び、その上階を住宅として利用している建物が多く見受けられました。朝から夜まで人通りが絶えず、建物の中だけでなく、街全体に人々の生活が広がっているような印象を受けました。さらに、街を歩いていると大小さまざまな看板が建物から張り出しており、日本ではあまり見られない独特の景観を形成しています。建築単体のデザインを重視するというよりも、街全体の活気や利便性を優先した都市のあり方が感じられました。建築を学び始めた頃は、建物単体のデザインや機能に目が向きがちでした。しかし実際には、建築は周辺環境や街並み、人々の暮らしとの関係の中で成り立っています。海外の建築を見ることで、日本の建築の特徴や考え方を改めて認識するとともに、同じアジア圏でありながら気候や文化の違いによって街並みが大きく異なることにも興味を持ちました。このような街並みを実際に体験したことで、建築は建物単体で完結するものではなく、周囲の環境や街との関係性の中で成り立っていることを改めて感じました。

4.設計者の視点で旅をする面白さ

旅行というと観光地や食文化に目が向きがちですが、建築に携わるようになってからは、訪れた街の建物や空間の使われ方にも自然と関心を持つようになりました。今回の台湾旅行でも、なぜこのような建築形式が採用されているのか、なぜこの街並みが形成されているのかを考えながら歩くことで、観光だけでは得られない多くの発見がありました。特に騎楼は、高温多湿な気候の中で人々が快適に暮らすための工夫として発展してきた建築であり、気候と建築の密接な関係を実感するきっかけとなりました。普段の設計業務においても、法令や機能性だけでなく、その場所で暮らす人々にとって本当に使いやすい建築とは何かを考えることが重要です。今回の旅行で得た経験は、建築を見る視野を広げる貴重な機会となりました。建築は図面や法令だけではなく、その土地の気候や文化、人々の暮らしによって形づくられています。今回台湾で見た街並みや建築は、そのことを改めて実感させてくれました。
これからも様々な場所を訪れ、その土地ならではの建築や街並みに触れることで、設計者としての知識や感性を磨き、日々の設計業務に活かしていきたいと思います。