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2026/07/03 |  社員ブログ

2024年に始まった相続登記義務化と、知っておくべき放置リスク

人ごとではない「実家の土地」問題
多くの人にとって「実家」や「先祖代々の土地」は、いつかは向き合わなければならない大切な資産です。しかし、いざ相続のタイミングを迎えると、「誰が引き継ぐか決まらない」「手続きが面倒」といった理由から、名義変更をしないまま放置してしまうケースが少なくありません。

実は、日本の国土の約2割(九州の面積に匹敵する規模)が、所有者が誰だか分からない「所有者不明土地」になっていると言われています。この深刻な社会問題を解決するため、日本の不動産ルールが大きく舵を切りました。2024年4月1日から、これまで任意だった「相続登記(不動産の名義変更)」が法律で完全に義務化されたのです。

「地方の安い土地だから」「家族の仲が良いから後回しで大丈夫」と油断していると、思わぬペナルティやトラブルに巻き込まれる時代になりました。本コラムでは、この義務化の具体的な中身と、土地を放置することに潜む恐ろしいリスク、そして今からできる現実的な対策を分かりやすく解説します。

- 目次 -
CONTENTS

1.義務化の内容と「過去の相続」への影響

まずは、新しく始まった相続登記義務化のポイントを整理しておきましょう。
もっとも重要なルールは、「不動産の相続を知った日(または遺産分割が成立した日)から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」という点です。もし正当な理由がないにもかかわらず、この期限を怠った場合には、「10万円以下の過料(かりょう)」という行政罰が科される可能性があります。
ここで多くの人が勘違いしやすいのが、「義務化されたのは2024年4月以降に発生した相続だけでしょ?」という点です。結論から言うと、これは間違いです。2024年4月1日より前に発生していた過去の相続についても、すべて義務化の対象となります。

過去の相続分については経過措置が設けられており、義務化がスタートしてから3年後、つまり2027年(令和9年)3月31日までに登記を完了させなければなりません。机の奥に眠っている古い権利証や、亡くなった祖父母名義のままになっている山林などがある場合は、今すぐ動く必要があります。

2.過料だけではない、世代交代で泥沼化する罠

相続登記を放置するリスクは、10万円の過料だけではありません。本当に怖いのは、時間が経つほど、その土地が売ることも貸すこともできない負の遺産へと変わっていくことです。
① 名義人のネズミ算式の増加
相続登記をせずに世代交代が進むと、次の相続、さらにその次の相続が発生します。すると、本来なら兄弟数人で分け合えたはずの土地の権利(共有持分)が、従兄弟やその子供、さらには一度も会ったことがない遠方に住む親族にまで細分化されてしまいます。土地を売却したり、建物を解体したりするには原則として「名義人全員の同意」が必要です。名義人が数十人に膨れ上がってしまえば、全員の連絡先を突き止めることすら不可能になり、事実上その土地は完全に凍結されてしまいます。
② 管理責任と維持費の負担
名義を変更していなくても、土地の所有権自体は相続人に引き継がれています。もし放置された空き家や土地の木々が倒れ、近隣の家を壊したり通行人にケガをさせたりした場合、高額な損害賠償を請求されるのは相続人(あなた)です。また、買い手がつかない土地であっても、毎年の固定資産税や草刈りなどの維持費はかかり続けます。

3.今からできる3つのアプローチ

手遅れになる前にとる対策として具体的なアプローチは以下の3つです。
① 「相続人申告登記」を活用する
「遺産分割の話し合いがまとまらず、3年以内の登記が間に合わない」という場合の救済措置として、新しく「相続人申告登記」という制度が作られました。これは、「私がこの土地の相続人です」ということを法務局に届け出るだけで、ひとまず登記義務を果たすことができる仕組みです。正式な名義変更ではありませんが、過料を避ける応急処置として非常に有効です。
② 不用な土地を国に引き取ってもらう
誰も引き取り手がない地方の原野や農地を抱えている場合、「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討しましょう。これは、一定の審査基準(建物が建っていない、境界がはっきりしているなど)をクリアし、10年分の管理費用にあたる負担金を支払うことで、土地の所有権を国に手放すことができる制度です。
③ 専門家(司法書士)に相談する
戸籍謄本の収集や登記申請書の作成は、一般の人にとっては非常にハードルが高い作業です。特に数世代前の相続が絡んでいる場合は、専門知識が不可欠です。まずは不動産の登記のプロである「司法書士」に相談し、現状の確認から始めるのが一番の近道です。

4.まとめ

2024年の相続登記義務化は、「土地の所有者としての責任」を強く求めるものへと変わりました。しかし、これは決してマイナスなことばかりではありません。これまで曖昧にされてきた不動産の権利関係をすっきりさせ、次世代にクリーンな資産を引き継ぐ絶好のキッカケとも捉えられます。

土地を「負の遺産」にしないために最も大切なのは、家族や親族が元気なうちに、その土地を将来どうしていくのかを率直に話し合うことです。今、重い腰を上げて一歩を踏み出すことが、将来の家族を大きなトラブルから守る最大の防衛策になるのです。