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2026/06/12 |  社員ブログ

建築設計におけるカラーデザインの重要性

―人に寄り添う空間づくりの基盤として―

建築におけるカラーデザイン(色彩計画)は、単なる意匠的な要素ではなく、利用者の心理や行動、さらには安全性や快適性にまで影響を及ぼす重要な設計要素です。そして、その効果をより豊かにするのが「テクスチャー(素材感)」の存在です。
同じ色であっても、仕上げの違いによって受ける印象は大きく変わります。例えば、光沢のある素材は明るくシャープな印象を与える一方で、マットな仕上げや木材のような自然素材は、やわらかく落ち着いた印象を生み出します。色とテクスチャーは切り離して考えるものではなく、一体として計画することが重要です。
特に介護施設や保育施設のように、人の生活や成長に深く関わる建築においては、この両者のバランスが空間の質を大きく左右します。
本稿では、介護・保育施設における色彩計画の視点として、以下の3つのキーワードを軸に整理します。
「安心」「識別」「調和」これらにテクスチャーの考え方を重ねることで、より実効性の高い空間づくりが可能となります。

- 目次 -
CONTENTS

1.安心をつくる色彩とテクスチャー

介護施設や保育施設において、まず重視すべきは「安心」です。利用者が長時間を過ごす空間では、視覚的・触覚的な心地よさが重要となります。
介護施設では、ベージュや淡いグリーンといった穏やかな色調に加え、木材や布調クロスなど、温かみのあるテクスチャーを取り入れることで、より安心感のある空間を実現できます。視覚的な柔らかさと素材の持つ質感が相まって、家庭的で落ち着いた雰囲気が生まれます。
また、光沢の強い仕上げや冷たい印象の素材は、場合によっては緊張感や不安感を与えることもあるため、用途に応じた選定が必要です。手に触れる部分には、滑りにくく、かつやさしい触感の素材を用いることも重要な配慮となります。
保育施設においても同様に、色彩だけでなく素材感が子どもたちの感覚に影響を与えます。木のぬくもりや布のやわらかさなど、触れて心地よいテクスチャーは、安心して過ごせる環境づくりに寄与します。
安心とは、目に見える色だけでなく、「触れたときの感覚」も含めて形成されるものです。

2.識別を助ける色彩と質感の工夫

「識別」という観点では、色彩に加えてテクスチャーの違いも有効な手がかりとなります。
介護施設では、床・壁・扉の色にコントラストを設けるだけでなく、素材の違いによって空間の変化を感じ取れるようにすることが有効です。例えば、居室と共用部で床材の質感を変えることで、利用者が無意識のうちに場所の違いを認識できるようになります。
また、滑りにくい床材や凹凸のある仕上げは、安全性の向上にも寄与します。手すりについても、視認しやすい色に加えて、握りやすい質感とすることで、より確実な動作を支援することができます。
保育施設では、活動エリアごとに色分けを行うと同時に、床材や壁材のテクスチャーを変えることで、空間の性格をより明確にすることができます。例えば、静かに過ごすエリアではやわらかい素材を、活発に動くエリアでは耐久性のある素材を用いるなど、用途に応じた使い分けが効果的です。
色と質感の両方を活用することで、より直感的で分かりやすい空間が実現します。

3.調和を生み出す色と素材

「調和」という視点においても、色彩とテクスチャーは密接に関わります。

建物の外観においては、色味だけでなく素材の選定が周辺環境との関係性を大きく左右します。例えば、自然素材やそれに近い質感の仕上げは、街並みや景観に溶け込みやすく、地域との一体感を生み出します。

介護施設では、地域に開かれた存在として親しみやすさが求められるため、過度に無機質な印象を避け、やわらかな色と質感を組み合わせることが重要です。

保育施設においても、外観は落ち着いた色調としながら、内部で多様な色彩や素材を展開することで、周囲との調和と内部空間の豊かさを両立させることができます。

調和とは視覚的なバランスだけでなく、素材の持つ風合いや経年変化も含めて考えるべきものです。時間とともに味わいを増す素材は、長く地域に愛される建築につながります。

人を支える色彩とテクスチャーの設計へ

4.人を支える色彩計画へ

介護施設や保育施設における空間づくりは、「安心」「識別」「調和」という3つの視点に、色彩とテクスチャーの両面からアプローチすることで、より質の高いものとなります。
色は視覚に、テクスチャーは触覚に働きかけ、それぞれが相互に作用しながら空間の印象を形づくります。例えば、同じ色合いであっても、木のぬくもりを感じる素材と無機質な素材では、利用者が受ける心理的な印象は大きく異なります。私たち設計者は、その違いまで丁寧に読み取りながら空間を構成していきます。
そして、こうした色彩や素材の選定は、単独で決定されるものではありません。私たちが大切にしているのは、建築全体の方向性を定める「コンセプトワーク」に基づいてデザインを組み立てることです。
施設が目指す在り方は何か。 利用者にどのような時間を過ごしてほしいのか。 地域とどのようにつながっていくのか。 そうした根本的なテーマを整理し、建築のコンセプトとして明確にすることで、色彩計画や素材選定にも一貫性が生まれます。
例えば、「家庭的なぬくもり」をテーマとする施設であれば、やわらかな色調や自然素材を基調とし、「活動性」や「交流」を重視する空間であれば、適度なアクセントカラーや軽快な素材感を取り入れるなど、コンセプトによって最適な色彩・テクスチャーは変化します。
つまり、色彩計画とは単なる“見た目の調整”ではなく、建築コンセプトを空間として具現化するための重要な設計行為であると私たちは考えています。
今後も私たちは、利用者一人ひとりの視点に寄り添いながら、色・素材・空間体験を一体として捉えた設計を追求していきます。そして、その場所ならではの価値を丁寧に形にしていきたいと考えています。